建築学生の皆さんには、課題の提出や就活用ポートフォリオ作成などをきっかけに“CAD”と呼ばれるソフトウェアの名前を見たり聞いたりしたことが何度もあると思います。
建築学科では大学や専門学校ごとに教育方針が大きく異なるため、CADの基本的な操作を講義内で教えてくれるところもあれば、学生の自主学習を想定している場合もあります。
学校側で使うCADソフトを指定されなかった場合、無数にあるCADソフトのなかから、使いやすいソフトはどれなのか、またそれぞれのCADソフトがどのような長所と短所を持っているのかについてもすべて自力で調べなければなりません。
しかしすべてのソフトを1からリサーチしようと思うと、課題制作や研究の時間が奪われてしまう。それでは折角の学生時間が台無しになってしまいます。
そのためこの記事では自分に合うCADソフトを探している建築学生へ向けて以下の4つのことを簡潔にご紹介します。
- CADソフトとは(おさらい)
- 無料版CADソフト
- 有料版CADソフト
- 無料版と有料版の違いについて
それでは順番に見ていきましょう!
そもそもCADソフトとは?
そもそも“CAD”ってどんなソフトウェアなのでしょうか。
CADは正式名称を“Computer Aided Design”と言い、広義には「コンピュータ支援設計」を意味します。
しかし現在、CADといえばほとんどの場合、設計図の作画ソフトのことを指します。
コンピュータが普及する以前の設計現場は、手書きの作画作業が主流でした。
しかしこのソフトウェアの登場のおかげで、ビルや橋梁などの平面図や断面図、立面図をすべてコンピュータ上で作画・管理できるようになったのです。
CADソフトを利用する場面
CADソフトは橋梁や道路などの設計業務のほかに、車や家のデザイン、商品開発用の図面など実にさまざまな用途で利用します。
近年では3Dプリンターが普及したため、立体プリント用のデータ作成などにも使われるようになりました。
CADソフトには3Dと2Dがある
CADソフトには3Dと2Dがあり、用途によって使い分けられます。
3DCADでは全方向から立体化したモデルを眺められるので、複雑な設計の読解を助けたり、より直感的な操作を可能にしたりします。
2DCADは紙に設計図を書くのと同じ要領で作画できるため、紙での設計経験がある建築学生にとっては比較的容易に操作をマスターできるでしょう。
CADソフトには機械向けと建築向けがある
CADには機械向けのソフトと建築向けのソフトがあるため、用途によって使い分けるのがベターです。
建築向けCADでは、従来の機能に加え、平面図から2D断面図や立面図を作画する機能や、2D図面から3Dモデルを造形する機能などが追加されています。
一方で機械向けCADでは、無数の部品を作画・管理する機能に長けたものや、実物そっくりのモデルが作成できるレンダリング機能を備えたものなどがあります。
当記事では、建築系CADに焦点を当てて、2D3Dに分けてご紹介します。
無料で利用できる建築3DCADフリーソフト
次に無料で利用できる建築向けの3DCADソフトを2本ご紹介します。
Fusion 360
はじめにご紹介するフリー3DCADソフトはAUTODESKが提供するFusion 360(フュージョン360)です。
Fusion 360はほかのフリーCADソフトに比べて使える機能が多く、モデリング機能やシミュレーション機能に優れています。
ほかにもデータをクラウド上で管理できるため、学校と家で異なる端末を使用している学生や、複数人で共同制作する場合でもストレスフリーで設計を進められるでしょう。
SketchUp Free
実際の建築業務やハウスデザイン現場で使用されているSketchUp(スケッチアップ)には、年間55ドルで使える学生版のほかに、free版も展開されています。
無料版では商用利用やオフラインでの作業には対応していませんが、ライン操作をはじめとする各種三次元コマンドを用いて感覚的な作画ができるところが魅力的です。
無料で利用できる建築2DCADフリーソフト
次に2DCADのフリーソフトをご紹介します。
Jw_cad
Jw cad(ジェーダブリューキャド)は無料でありながら、建築設計には欠かせないツールがよく揃っており高機能なため、初めて触れるCADにピッタリのフリーソフトです。
上記の無料版3DCADとは異なり、Jw cadはコンピュータに直接インストールして使用します。
インストール後は特別な操作やライセンス登録の必要がないため、すぐに設計を始められます。
有料でもおすすめの建築CADソフト
ライセンス契約に年間数千円から数万円の支出が必要になりますが、機能面やサポート面とコストのバランスがよいオススメの有料CADソフトがいくつかあります。
また調べてみると、意外に学生向けに廉価版および無料版ライセンスが用意されていることも多いことがわかりました。
AutoCAD
AutoCAD(オートキャド)はすべてのCADソフトウェアのなかでも特にシェア率が高く、多くの企業で標準ソフトとして使われています。
筆者が以前勤めていた設計事務所でもこのAutoCADが使われていました。
UIがわかりやすく汎用性に富んでいるため初心者でも扱いやすく、30日間無料で試用できるので1度触れてみるのはいかがでしょうか。
また学生や教員に限り、3年間無料学生版をインストールできるそうです。
Vectorworks Architect
Vectorworks Architect(ベクターワークスアーキテクト)では、正確な描画を可能にする高性能な2Dおよび3D作図機能と、マッピングやレンダリングなどを可能にするツール、そのほか建築作画には欠かせない機能が揃っています。
また『VectorWorks学生単年度版』と呼ばれるプランも用意されており、そちらは年間2万円程度で高品質なCADを試用できます。
ArchiCAD
ArchiCAD(アーキキャド)は従来のCADソフトが持っている機能に加え、新たに各部材のあらゆるシミュレーションを可能にした『3D設計ソフトBIM』と呼ばれるソフトウェアです。
ArchiCADは、従来のCADソフトで使い慣れた画層機能を取り入れており、操作が覚えやすいところが特徴です。
またArchiCADには、商用版の全機能を使える教育版が配信されているため、建築学生のうちに1度触ってみるのもよいかもしれません。
Revit
Revit(レビット)は前述のArchiCADと比較されることが多い3D設計ソフトBMIです。
ArichiCADともっとも異なる点は、従来のCADソフトにあった画層機能を廃止している部分です。
レイヤーの代わりに部材をパーツごとに役割を記述し、管理・作画を進める必要があるため初めは使用感を覚えるのに手こずってしまうかもしれません。
RevitにもほかのCADソフト同様に学生版ライセンスが販売されているため、気軽にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
建築系CADソフトの無料と有料の違いについて
無料の建築系CADソフトは自由に使えるお金が少ない建築学生でも、気軽にマイPCにインストールできるところが一番の利点ですが、その反面で機能が制限されていたり、広告が表示されたりするなど、使いづらい点が多少あります。
有料版CADですと、便利な機能を無制限で使えたり、サポートが充実していたりします。
社会人が個人で使おうと思うと高くついてしまいますが、建築学生であれば有料パッケージの無償版を特別に使用できる場合もあるので、1度調べてみてはいかがでしょうか。